こんにちは。近江製茶の川﨑です。
折角ですから、温かいお茶でもお淹れしましょうか？

お茶の淹れ方は好き好きですけど、
5人分なら茶葉は10gくらい。湯冷ましを注いで1分ほど待つ。
2分、3分待つと、もっと濃く出ます。

さぁ、どうぞ。
急須にお湯が残ると苦味が出続けますけど、
一度全部お湯を切れば、2煎目もおいしく飲めますよ。

近江製茶は明治4年創業の茶問屋で
私が7代目になります。
江戸時代、このへんは東海道の宿場で、
自分たちで作ったお茶を販売していた人がたくさんいて、
うちもそのうちの一つやったと聞いてます。

小学生の頃は、家の隣にある茶畑と荒茶工場が
姉と私にとってかっこうの遊び場でした。
通学路には製茶工場が3、4軒あったので、
お茶のシーズンになると、
小学校から歩いて帰る道すがら、
荒茶を蒸してるにおいが漂ってくる。

においの記憶は
残りやすいんでしょうね。

今でもよく覚えてます。
土山特有の思い出かもしれないですね。

でもまさか、自分がこの仕事に就くなんて、
思いもしなかった。
大学のとき、就職活動を始めるタイミングで、
父から家業を手伝ってくれ、と。
私はふわっとした性格なので、
父としては、まぁ試しに言ってみるかなって
そんな程度だったと思いますよ（笑）。

私には進路を決めるあと押しになった
記憶というのがあるんです。
大学進学で実家を離れるとき、
父が、店で扱っていた朝宮のお茶を
もたせてくれたんですが、

下宿先で淹れて飲んだら
すごくおいしかった！

それまで飲んでたお茶とは違う、
香りやすっきりとした味わいで。

今にして思うと、うちの店のなかでも、
特にいいお茶をくれたんでしょうね。
ふだん家で飲んでいたのは、
家のお茶畑で摘んだ自家製茶で、
それをおいしいと感じたことがなかったんだから。
あっ、父が聞いたら怒っちゃいますね（笑）。
でもこの記憶があったからこそ、
家業を手伝おうかな、という気持ちになった気がします。

昔も今も、お茶は毎日飲みますね。
日中はどうしても、
お茶を飲むこと＝仕事になっちゃうので、
家に帰って、夕食の片付けをしたあとに
ようやく一息。

娘とふたりでまったりと、
お茶を飲む。

一日の中で一番好きな時間です。

もう日課ですよね。
お茶は、そのときの気分と家にあるお菓子に
合わせて選びます。
和菓子のときは煎茶、洋菓子のときは、ほうじ茶か紅茶が多いかな。

さっきは、お湯を入れて何分だとか、
あれこれ言いましたけど、
ほんとは好きに淹れてもらったらいいんですよ！

いいお茶はやっぱり
どんな淹れ方をしても
美味しいですからね。

実は私、家では急須を使わないんです。
ティーポットに茶葉とお湯を入れて、
茶こしでざっとマグカップに注ぐ。

こんな寒い季節なら、熱いお茶をカップに注いで、
指を温めながら飲むなんて、すごくいいですよね。

「うちの土山一晩ほうじ」

⾹るほうじ茶（リーフ）

（近江製茶）

うちの一晩ほうじは、
萎凋の香りを引き立てる浅煎り、
焙煎の香りを強調する深煎りの
2種類の茶葉をブレンドしています。

「香るほうじ茶」という名のとおり、
香り高く、軽い味わいの飲みやすいほうじ茶です。
リーフのほか、手軽に使えるティーバッグの2種を
用意しました。

仕事も家事も、一日にやることがひと段落して、
ホッとする時間帯に、癒やしの一服としてぜひ。

私の中で、一晩ほうじはちょっと特別。
やっぱり、香りがいいですよね。
香りって、儚いものじゃないですか。
淹れた直後は立って、やがて消えていく。

だから、何かと合わせるのはもちろんですけど、
個人的には、ストレートに“お茶”として、
じっくり楽しんでほしいという思いもありますね。

わが家ではふだんから洋菓子に
ほうじ茶を合わせることが多いんですが、
一晩ほうじは紅茶に近いので、より洋菓子が合いますよ。

今日用意したのは、
姉が勤める野洲の洋菓子店「ママゴコロ」のもの。
うちは有機JAS制度が始まる前から、有機茶を扱っていますが、
このクッキーは、その茶葉をつぶして入れているので、
爽やかな風味がありますよ。

あぁ、おいしい。

クッキーやパイなどの焼き菓子のほか、
夏はアイスクリームもいいですね。

• 川﨑裕⼦
• 近江製茶

土山町生まれ。大学卒業後、家業である近江製茶株式会社に入社。2006年、代表取締役に就任。日本茶インストラクター。趣味は読書で、女性作家のエッセイや推理小説が好き。夕食後、娘とのお茶の時間が毎日の楽しみ。