丸安茶業 前野 安司

茶匠

こんにちは丸安茶業の前野です。
今お茶入れますから、どうぞ座ってください。

うちは創業が1872年で、
土山で代々お茶を商ってますけど、僕が4代目。
周りがね、特に菩提寺の今はなき老僧が、
たまたま僕の同級生の親父やったんですけど、
「お前はお茶屋になれ!」ばっかり言われて育ったんですよ。

刷り込みですわ、ははは。

今やったらね、職業の自由と言うのもあるんでしょうけど、
茶畑に囲まれて育って、自然にお茶屋になりましたね。

150年という歴史がありますからね
それを守りたいと思う一方で
もっと、いろんな人にお茶を楽しんでもらいたくて
新しいことやって頑張ってます。

たとえば、子どもが飲みやすいようにつくった
番茶があるんですけど、
孫や甥っ子もこればっかり飲んでて、
スーパーで買ったお茶には顔をそむけるんです。

農家さんに茶葉を特注して、焙煎も工夫してるから、
1歳くらいのちっちゃい子にも、
それが伝わるんやなと思いますね。

茶匠の仕事はお茶を売ることですけど、
お茶っ葉を仕入れて最終製品にするのも仕事なんです。

同じ品種のお茶でも農家さんごとに違いがあります。
それを、お客さんの好みにあわせてブレンドするんですね。
そのブレンドに茶匠の個性が加わる訳です。

お茶の季節になるとね、

1日に1000杯は、
飲みますねえ。

ずっと審査するんです。
せっかくやから、審査の様子見てみますか?

こういう、やかんからお湯入れて、
ほうじ茶の場合は熱湯で30秒。
湯気が出てきたら、
味、焙煎の炒り上がり、香りの3つを確認していくんです。

十人十色じゃないけど、
お茶農家さんによってその方の特徴と言うかなあ。
お茶に顔はついてないんだけど、個性を出してるんですよ。

僕らはね、

名前見んでも、飲んだら、
どの農家さんのお茶か、
分かります。

僕らが小さい頃はね、お茶の時期になると、
この辺り一帯にお茶を蒸す匂いがもう漂ったりして、
そういうのが春の風物詩ですね。

賑やかでね、僕も高校とか大学とか行かしてもろてましたけど、
夏休みには駆り出されて、手伝うわけですよ。
お茶農家さんに集荷に行ったりね。
毎年そうやってると、農家さんごとに違うのがわかってくる。

色とりどりに並ぶ茶葉の写真

そのうえに、例えば同じ農家さんが作られたものでも、
5月の初めと真ん中と月末では
茶に違いがあるのは当たり前なんですけど、
下手したら同じ木でも

午前中に摘んだ茶と、
午後に摘んだ茶は、
味も香りも違うんです。

僕が若い頃ね、先輩方がお茶屋は毎年一年生やって言われた。
そんだけ勉強しないと、分からない。

透きとおるほうじ茶の写真

普段はね、お湯を沸かしてポットに2本入れてある。
お茶を飲む時は一回冷ましてから、
急須に入れて、淹れる。

1回飲み出すと湯呑みで5杯くらいは飲みます。
少なくても1日10杯で効かないでしょうねえ・・・

昔は摘んだままの形のが多かったんで、
それをやかんで沸かして、そのまま、井戸にドボンと放り込んで、
自然に冷やしてやると緑茶の冷やしたやつになるんです。

ぜんぜん旨味が違うんです。
聞くだけで美味しそうでしょう?

「うちの土山一晩ほうじ」

一晩焙茶
(丸安茶業)

通常、ほうじ茶は直火熱風で炒る方法が多いんですが、
うちの一晩ほうじは、
伝統的な石焼焙煎を組み合わせて、
高火力と遠赤外線の2度焙煎に挑戦しました。
焙煎士の腕の見せどころですね。

「一晩ほうじ茶リーフ」と「一晩ほうじ茶ティーバッグ」、
「泡立つラテ 一晩ほうじ茶ラテ」の3種を作ったので、
気分やシーンで使い分けていただけたらと思います。

どんな時に飲むのがおすすめですか?

「おいしいお菓子を見つけた時に」

洋菓子でも和菓子でも、
おいしいお菓子に出会ったらその時はぜひ、
一晩ほうじを思い出してほしいですね。

皆さん頑張って働いてるからね、
おいしいお茶とお菓子をいただく時くらいは、
ほっとするタイミングになるといいですよね。
お酒もほっとするかもしれんけど、ははは

お茶でほっとする時の一番ポイントになるんは多分ね、香りです。
いい香りっていうのは人それぞれやけど、微発酵した萎凋香は
ほわっとこう包み込むような香りだから心癒されると思います。
うちの一晩ほうじは、ちょっとこだわって、
他にはないねっていう香りになってますよ。

何とあわせるのがおすすめですか?

「和菓子には絶対合いますよ」

一晩ほうじは紅茶に似た作り方をしてるので、
ケーキとか洋菓子に合いますね。
あとフルーツとの相性もいいですよ。

言うても、どれも和菓子には絶対合いますよ!
これ、玄米茶のせんべいですけど、これなんかもあいますよ。
滋賀県は米所でもあるんで、もち米使ったあられとか
おかきとか、いいの作ってるとこあって
そういうのには間違いなく合います。

うん合うね、ははは

お茶は年寄りだけのものじゃなくて
若くても子どもさんでも、楽しめるようなアイテムを作るために、
頑張ってるんで、うちのお茶も飲んでみてください。

  • 前野 安司
  • 丸安茶業

1959年、滋賀・⼟⼭町の茶商の家に生まれ、大学卒業後、家業に入る。2004年に代表取締役に就任、丸安茶業4代目となる。茶師六段、日本茶インストラクター2期生。好きな食べ物は蕎麦。趣味は旅。

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滋賀県甲賀市土山町頓宮267